哲学の中庭

…と、真理の犬たち

社会的能力と文明的能力

ある人は、自分の社会的能力に自信をもっていた。 しかし、食べること、装うこと、 声をかけることなどのもつ意味を知らなかった。 つまり、文明的能力をまったく欠いていた。 別のある人は、社会から距離をとろうとして、 文明からも離れてしまった。 つま…

「人間原理」とアキレスと亀

「なぜ宇宙はこんなにも秩序だっているのだろう?」 「何を驚いているんだい? そのように問う複雑で知的な生物がいるということは、 当然宇宙は秩序だっているに決まってる。 何も不思議なことはないよ。」 たとえば「人間原理」という考え方は、この種の答…

円坐の静けさと沈黙

円坐。 テーマも目的もなく人々が集まり車座になる、 原始的で根源的な会。 始まってからおよそ30分、 誰も話さない。 思いがけない感覚や考えが次々によぎる、 豊かな静けさ。 この豊かな静けさと引き換えにできる声を、 僕はもたなかった。 3時間にわた…

なぜ人は物語に没頭するのか?

今朝、目が覚めてふと、 「なぜ忍者ハットリくんの獅子丸の好物は、ちくわなのだろう?」 と思った。 さっそくスマホでネット検索してみると、某質問サイトに、同じ疑問が投稿されている。 「獅子丸の好物はなぜ竹輪なんですか?」 さらに疑問がわいてきた。…

「ラ・ラ・ランド」を観に映画館に連れていってもらった

とてもよい映画だった。 (できるだけまっさらな状態で観たい人は、読まないほうがいいかもしれません。) ▼ 予告編 www.youtube.com 夢追い人たち(dreamers)の物語だ。 途中、「どうして夢を追うのか?」に対して、「愛されたいから」という答えが発せら…

世界の抉り方

かの師は学生に、作品の内側にあるものから語り始めなさい、と言って指導するという。作品の周辺にある文脈や史実ではなく、作品そのものの内側にあるもの。 芸術などの作品だけでなく、おそらく世界だってそうだ。ある夜、かの師が懇親会でこう話すのを聞い…

向日葵の種

いろんなルートから考え続けているけど、どうも世界は向日葵の種のような形をしているようだ。 主観からの超越構成の議論だと、「どの主観?」という根本的な疑問が飛び越されてしまうしかない。そして、主観一般が超越一般を構成する議論が展開される。主観…

哲学対話における知的安全性とは?

このブログの文章、きわめて重要なことを言っている。とくに3ブロック目の対話がすごくいいと思う。 知的安全性とは、リラックスして何でも言える安心感のことではない。知的安全性とは、真理探求が邪魔されない、台無しにされないという安心感。だとすると…

哲学のための地味な作業

僕はイングランドの分析哲学畑で論文指導を受けた経緯があるので、質疑応答といえば、第一に論証の妥当性チェック。論証の各ステップによる推論のチェックだ。第二には、問いと論証がもつ前提の真理性チェック(真偽の検討)。 これらをするうえでは、問いと…

世界は謎の総体である

世界は謎の総体であり、事実の総体ではない。 The world is the totality of enigmas, not of facts. 世界を適切に記述するのは疑問文の集合であり、平叙文の集合ではない。 The world is properly described by a collection of interrogative sentences, n…