哲学の中庭

…と、真理の犬たち

図書室の二人

小学校一年生のとき、

同じクラスに、ダウン症候群をもつ女の子がいた。

子どもの僕はそれが何なのかを知らないので、

少し特別な女の子というくらいに思っていた。

 

何やら大きな小学校というところや、

同年代の子たちに対する恐れがあったとき、

その子と接しているあいだは、

とても心が落ち着いたようにおぼえている。

 

クラスで図書室へ行き読書する時間には、

二人でカーペットの床に座って、

絵や写真の多い本をよく広げていた。

 

言葉はほとんど交わさなかったと思うが、

僕も絵や写真の多い本が好きだったし、

その子がところどころで興味を示すのに、

僕も興味を示していたのだろう。

 

常夏の図書室。

 

はてしなく長い、

一学期か数ヶ月かが過ぎたころ、

いつのまにかその女の子は、

面倒見のよい女の子たちに囲まれていた。

 

僕はいまと同じで、

状況を飲みこむのが苦手な子どもだったが、

何かが変わってしまったことがわかり、

かすかに寂しく思ったのをおぼえている。

 

 

 ボーロ