まさにここにあるもの
「哲学では、
一般的なものについてだけでなく、
個物について考えることができるんです。」
そう若者は言った。
何をわかったようなことを。
目の前の人間ですら見えてないくせに。
僕は言った。
「あなたは、ここにある筆箱や紙について
考えていますか?
これらこそが個物、特殊者です。
あなたは個物一般、普遍的な特殊者について
考えているにすぎません。」
若者はよく理解できないようだった。
すると、近くにいた女性が、
若者に向かって説明した。
「まさにここにあるものについて
考えなければ、
個物、特殊者について考えたことには
ならないということです。
まさにここにあるもの。」
まさにここにあるもの。
それは筆箱や紙のような
物ではないのかもしれない、と思った。
明け方の夢はそんな夢だった。
ボーロ