哲学の中庭

…と、真理の犬たち

まさにここにあるもの

「哲学では、

一般的なものについてだけでなく、

個物について考えることができるんです。」

そう若者は言った。

 

何をわかったようなことを。

目の前の人間ですら見えてないくせに。

 

僕は言った。

「あなたは、ここにある筆箱や紙について

考えていますか?

これらこそが個物、特殊者です。

あなたは個物一般、普遍的な特殊者について

考えているにすぎません。」

 

若者はよく理解できないようだった。

すると、近くにいた女性が、

若者に向かって説明した。

 

「まさにここにあるものについて

考えなければ、

個物、特殊者について考えたことには

ならないということです。

まさにここにあるもの。」

 

まさにここにあるもの。

それは筆箱や紙のような

物ではないのかもしれない、と思った。

 

明け方の夢はそんな夢だった。

 

 

 ボーロ