勇気ある探求とは?
▲ Wittgenstein, Culture and Value, pp. 38e-39e.*1
理念、理想ができてしまえば、
勇気も偽物になる。
本物の勇気が必要になるとき、
そんな立派なものの後押しはない。
さて、勇気ある探求とは何だろうか。
誰も探し当てたことのないものを求め、
誰も踏み入れたことのない地に分け入る。
理念、理想、立派なものの後押しは、ない。
なぜなら、立派なものは、すでによく知られたものだから。
まったく知られていないものを探し求めるためにこそ、
勇気をふりしぼるのだ。
だから、勇気ある探求は、
〈何だかよくわらかないものに従う〉
というかたちをとらざるをえない。
たとえば、
そのへんを歩いていたおじさんのことが
何だか気になってしまい、家まで着いていくことする。
「そんなくだらないことは誰もしない」と人は言うだろう。
そのとおりだ。
くだらないからこそ勇気が出ず、だから誰もしないのだ。
この「何だかよくわからないもの」を、
「ただの好奇心」と呼んでもいいかもしれない。
しかし、「ただの好奇心のために」という
理念、理想ができてしまえば、
勇気はたちまち偽物になるだろう。
ボーロ
*1:Translated by Peter Winch in 1980.