2018-01-01から1年間の記事一覧
サルヴァトーレ・アダモの Si tu étais という歌に、 このような箇所がある。 あなたが時間なら 私は砂時計になる あなたは私の中でおぼれる Si tu étais le tempsJe serai sablierEt tu t'égrainerais en moi もう野暮なことを言い始めてしまうが、 もしあ…
*1 子ども(こそ)が哲学(対話)者であるのなら、大人は子どものように哲学(対話)しなければならない。でも、大人は本当に子どものように哲学(対話)を遊べるのだろうか。 砂場の子どもは砂そのものを楽しむ。これが大人には難しい。 さらさらの白い砂は…
*1 引用*2 私の哲学の方法は弁証法だが、弁証法のモデルは対話ではなく対話の不成立だ。対話する双方が相手の言っていることが本質的に理解できないような地点にまで対立点を先鋭化させる-一人の人間がそのように思考することによって、原理的に理解しあえ…
哲学対話にかかわるようになってから、 「ケア」という言葉をよく聞くようになった。 「ケア」― これはどういう意味だろうか。 いろんな人が使うが、みんな同じ意味で使っているのだろうか。 あるいは、そもそもみんな、 自分がどういう意味で使っているのか…
*1 「立場」という力、パワーを笠に着て 相手を黙らせる人は、 相手が黙るしかない立場にあることを、 知っていてそうする。 すると、その「相手」であるあなたのほうは、 黙るしかない立場にあるから、 黙っているのだろうか。 じつは、そうではない。 あな…
▲ プラトンのアカデメイア跡地*1 「一軒の喫茶店をまかせるから自由にやってみてほしい」と言われたとする。 あなたならどんな喫茶店にするだろうか。 二種類の人がいるのではないだろうか。 一方には、自分自身にとってのよい喫茶店のイメージを思い描いて…
▲ Wittgenstein, Culture and Value, pp. 38e-39e.*1 理念、理想ができてしまえば、 勇気も偽物になる。 本物の勇気が必要になるとき、 そんな立派なものの後押しはない。 さて、勇気ある探求とは何だろうか。 誰も探し当てたことのないものを求め、 誰も踏…
日本哲学プラクティス学会第一回大会に行ってきた。 そこ(で、発表するわけでなく、一人で勝手に考えるため)に密かにもって行った問いは、 (なぜ)哲学者は/が(哲学)対話の実践に参加する(べきな)のか? ここで私が考える哲学者とは(哲学教育や臨床…
ハワイの先生方は、「子どもの哲学」をやっていると訪れる感動的な体験を、"p4c magic" という言葉で表現していた。 哲学カフェでの対話は「子どもの哲学」とは少し違うかもしれないが、それでもマジカルな瞬間は訪れる。 東邦大学の哲学カフェは、今年度か…
コーハンさんのワークショップに 参加して学んだ最大のことは、 問いが欲しがっているのは答えではない ということだった。 コーハンさんが言ったように、 問いを見ると、答えたいという衝動がわく。 その衝動は、いわば錯覚だ。 問いは答えを欲しがってはい…
ヴィクトール・フランクルは、 強制収容所の監視者たちを観察した経験から、 このように書いた。 こうしたことから、わたしたちは学ぶのだ。この世にはふたつの人間の種族がいる。いや、二つの種族しかいない、まともな人間とまともではない人間と、というこ…
隠遁するのは 人の世に疲れた老人だけではない。 人の世を恐れる青年もまた、 その魂を内に隠遁させている。 その純粋さ、潔癖さによって、 青年の内に、核、もしくは道が、 ようやく形をなしはじめる。 そのとき、恐れから一転、 青年は自らの魂を、 外へ放…
これはフルール・ド・リス、いわゆる「百合の紋章」。 フランス王家やフィレンツェの紋章としてよく知られる。*1 菖蒲の花を模しているとされるが、 さらにさかのぼれば蜜蜂の形に由来するという説もある。 *2 ところで個人的には、 インド由来のヴァジュラ…
私はなんと小さいのだと、 思い知らせてくれる師がいることは、 幸いなことだ。 偉大な師は、 誰にも見えていなかった闇を、 初めて指し示す。 その闇は、世界の深層であり、私の深層。 その闇の深さを、私は思い知る。 その闇の深さに比して、私はあまりに…
食卓の上にある、 命だったものを前にして、 「あなたの命をいただきます」 と言うことは、可能だろうか。 私たちは、 「あなた」と呼ぶことのできる相手を、 食べることはできるだろうか。 文明の始まりは、 〈埋葬〉だったという話がある。 庭で息絶えたス…
たまに、オチのある夢を見る。 小型ドローンが、 家の窓のところに飛んできて、 窓の向こうのレンガに着地する。 「爆弾よ!」と母が叫ぶ。 僕は窓を開けて、 できるだけドローンに近づかないようにしながら、 ドローンを長いトングでつかみ、 向こうへ投げ…
▲ ライプニッツと書簡を交わしたゾフィー・シャルロッテ王妃*1 哲学書を、 文学作品のように読んでいては、 いつまでたっても哲学はできない。 哲学書を読むと、 世界が違うしかたで見えたりする。 たしかに哲学書には、 その種の、芸術のような効果もある。…
*1 知を愛する人にとって、 固執は大きな妨げとなる。 知に少しでも近づくためには、 いまの自分の考えから とにかく動かなければならない。 考えを変えずにとどまっていては、 知に近づくことは当然できない。 ただ、「考えが変わる」といっても、 自分の考…
観世能楽堂へ行った。 能の演目は「絵馬」と「二人静」。 狂言は「柑子」。 能を観にいくのは、 この世ならぬものをこの目で見るため。 狂言を観るのは、 意味を脱した滑稽で笑うため。 いわば、能はこの世を上に超えており、 狂言はこの世を下に超えている…
▲ ミカエルとルシフェル*1 否定することが いけないことだとしたら、 どうしていけないのか。 否定された側を傷つけるから? 否定された側に不利益を与えるから? 自分自身の経験を狭めてしまうから? ▼ 雷神インドラは、蛇の怪物ヴリトラを退治する*2 ある…